魚を舐めていたようでございます。
今朝は、夜も開け切らぬうちから、ベッドの中で、悶々とした時間を過ごしておりました。
別に、よからぬ妄想が闇の中を駆け巡っていたわけではございません。 原因は、昨夜のスコールでございます。
ここ数日来、気温が35度近くにもなり、その上、じっとしているだけで、体の中から汗が沁み出てくるような湿気の多い天候でございました。おまけに昨日は、今年2度目の本格的なスコールでございました。
体にまとわりつくようなべっとりとした夏の空気の中で、釣り人が考えることは一つでございます。
そう、「バラマンディー」でございます。
高温、湿気、スコールと、3拍子です。あの精悍な面構え、シルバーブラックに輝くボディーを思い出さないわけがございません。
朝4時に目覚ましを合わせ、9時過ぎにはベッドにもぐりこんでおりました。
そうして向かえた翌朝、4時。
ところが、昨日の気合は、どこへやら。 目覚ましに手を伸ばし、時間を確認したものの、このまま寝入ってしまおうかと思いながら、再び夢の中へ。
意志薄弱とはこのことです。
夢の中と現実とを行きつもどりつしながら、出かけようか、このまま惰眠をむさぼることにしようか、あいまいな意識の中で30分ほど、悶々としていたわけでございます。
最終的にベッドから出ようと意を決したのは、他ならぬ尿意でございました。この生理現象は、誰にも止めることはできません。 釣り人も人の子。釣りに出かける最終的な決断など、所詮、そんなものでございます。
そして、海岸に立つこと、2時間が経過。
水面にベイトフィッシュが浮き、申し分のない雰囲気だったのでございますが、魚からのコンタクトがまったくございませんでした。
波一つない水平線から登る太陽は、それはそれは美しいものでございましたが、朝早くから日の出を眺めに出かけて来た訳ではございません。
このまま帰ってしまうのも、なんとなく惜しい気がして、別の場所へ向かったのでございます。
別のポイントに到着し、防波堤のロックバー沿いにキャスティングを初めて、10投目くらいでしたでしょうか。 突然、「ゴンッ!!」という当たりと共に、ラインがロックバーに沿って沖へ移動し始めたかと思うまもなく、バラマンディーが、空中に、その魚体を翻したのでございます。
このポイントでは久しぶりのバラマンディーで、ほんと、嬉しゅうございました。サイズは70(ナナマル)程度でございました。
ほとんど勝ち誇ったような気分になり、何度かやり取りをしながら、魚を手元まで引き寄せたのでございます。
そこで、最後の抵抗かと思わせるような突込みがあったのですが、その直後、予期せぬ出来事が起こったのでございました。
フックアウトです。
こちらは、完全にノックアウト状態でございました。(完全にオヤジギャグってます)
茫然自失というのは、あのことを指して言うのでしょうか。
完全に、獲ったつもりでいたのですが、人生も折り返し地点に至るこの歳になって、初めて、人生の厳しさを思い知らされたような気分でございました。
周りには、どなたもいらっしゃいませんでしたので、この気持ちを訴える術もなく、しばらく、自分の不甲斐なさを詰っておりました。
「F・・K」
原因は30ポンドPEでございます。
このところ、大物ばかりを狙った釣りをして参りましたので、初心を忘れておりました。
至近距離での強引な突っ込みで、簡単にフックを外されてしまいました。
家を出る際に、なぜ20ポンドのナイロンラインのロッドを手にしなかったのかと、後悔すること、頻りでございました。
やはり、慢心していたようでございます。
気を取り直して、魚が消えた辺りにルアーをキャストして、2投目だったでしょうか。 今度は、それより一回り大きな魚が、ルアーをチェイスしてまいりました。
80(ハチマル)程度でしたでしょうか。
トゥイッチを細かくして、ルアーを目の前で遊ばせてやると、魚も、我慢ならなかったのでしょう、「パク」っとルアーを咥え込んだのでございます。
先程の落胆が、あまりにも大きかっただけに、心の中はガッツポーズでございました。
所詮、私のテクニックにかかればこんなものと、先程以上に勝ち誇った気分でした。
といころがでございます。
一瞬、ルアーが口の中に消えたのを見届けたのですが、あろうことか、その80(ハチマル)バラマンディー、水中から上目使いにこちらを見つめながら、ペッとルアーを吐き出したのでございます。
「ガッビーーーン!!」
完全に魚に舐められおりました。
また、同じ過ちを繰り返さないために、最初の70(ナナマル)を逃がしてしまった後、ドラグをかなり緩めに設定しておいたのですが、フックにかすりもせず、ものの見事にペッと吐き出されてしまいました。
わたくし、当分、この仕打ちから立ち直れそうにありません。
後には、何事もなかったように静まり返るグレートバリアリーフへと続く海が広がるばかりでした。
今日は暇だわ。
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