女神、微笑えむ
ニューギニアでのフィッシングの後半戦、初日。
この日、朝6時半頃、ロッジの近くの村でボートを下ろす。
殆ど単調なリズムで繰り返される村の生活では、我々の出現はかなり物珍しいのか、出船時は村人総出でお見送り。
初めての川で、しかも、あまり釣りをしたことのないような現地ガイドが乗船。
ポイントもわからないので、とりあえず上流部から丁寧にポイントを潰していくことにして、ガイドにポイントを指示しながら、少しづつ河口に向かって下り始める。
当然、先行するボートからかなり遅れ、河口部についた頃には他船ですでにメーターオーバーがランディングされていた。
河口部は、片側が砂浜のシャローバンクで魚の居付くような場所はなく、片側のレイダウンエリアも距離で言えば200メートル程。
先行艇では、盛んに大物のバイトがあるようで、何やら騒がしげ。
しかし、河口に到着してから1時間程で、潮も停まり、当たりが遠のく。
そこから昼食を挟んで3時間。全く、魚の反応がなくなる。
狭い河口をウロウロし、ストラクチャーと思しきポイント全てにルアーを投げ込むがお手上げ状態。
最終的に半ばヤケクソで、超特大のシンキングミノーを投げてみる。それがこれ。
30分くらいはこの超特大ミノーをキャストするが、やはり無反応。
(このときは、「これで釣れたら面白いよな。」なんて言いながら、半分、あきらめムードで写真を撮ってます。)
これから潮が動き始めるという頃に、ある流れ込みのコーナーの向かい側にボートをステイさせ、魚が回遊してくるのを待ち伏せすることにする。
そのポイントでキャスティングを初めて20分程したとき、「コンッ」 と微妙な当たり。
「魚か?、それとも水中の倒木の枯れ枝にルアーが触れた?」などど思いながらラインの先に沈んでいるルアーのある方向に目をやると、ラインがかなりふけているのが判る。
「アレッ?」と思い、糸ふけを取る為にラインを回収すると、ラインにテンションがかかり重さを感じる。
すぐさまロッドを手前に引き、グッとロッドを煽ると、水中から、バケツのようなバラマンディーの口が水面下まで浮いてきて、ヘッドシェイク!!!
「でた~~~ア!!」
一旦姿を消したバラマンディーが、同じ場所でいきなりジャンプして、その姿を水面に曝す。
「うわッ、でか~~~ア!!」
ジャンプの後、ボートの反対側に潜り込んだので、ロッドを水中に突っ込みながらエンジンをかわし反対側に移動。
そこでもジャンプ。
その光景を眺めているガイドに、とりあえずモーターを上げるように指示したが、何を勘違いしたか、エンジンを始動。
ここでプロペラでも回されたら大変なことになるので、大声で怒鳴る。
「 KILL THE MORTER !!」
このとき、アンカーを上げさせて、ボートでチェイスしようかとも考えたが、あまりガイド経験のない人間に、魚の動きに併せてボートをコントロールすることなど到底無理と考えて、アンカーを入れたままにして、エンジンを水から上げさせる。
ボートの反対側で何度かやりとりを繰り返すと、今度は、ボートの舳先から、アンカーロープの下をくぐって、またボートの反対側に回り込む。
エッ~~~!!
かなり面倒な展開になってきたと半分あせりながら、アンカーロープの下からロッドを反対側にかわそうと思い、左手に握っていたロッドを右手に持ち替えようとしたとたん、
な、な、な、なんと~~!!
ロッドが手からすっぽ抜け、水中に!!
ここで、オヤジ(俺のこと)は、慌てず騒がず、即座にボートの前部デッキに這いつくばり、水中に消えていきそうになるロッドに手を伸ばす。
とおりゃー!!
運良く、右の手にロッドがおさまり、緩んだラインを回収して、まだ、魚がかかっていることを確認し、できるだけ間合いを詰めてから、ロッドをアンカーロープの下に通して、反対側に移動。
(ほんと、このときは竿ごと、この魚を逃がしてしまったかと思いましたわ。ロッドが手に取れなかったら、きっと、「サブン!!」と水中に飛び込んで、ロッドを回収しようとしたと思います。その光景の一部始終を近くのボートから目撃していたスタッフでインド人のドゥナさんは、まさに神業だったと言ってました。自分でもそう思います。)
反対側(最初に魚が現れたのと同じ場所)に移動した魚は、そこでも何度かジャンプを繰り返し、ボートの後ろから、またも反対側に移動。
かなり弱くなってきたと思い、同船者のカンチャンにネットを用意してもらうが、カンチャンもかなり興奮気味。
決してネットで魚を追わないで、少しネットを沈めて、魚が誘導されるのを待つように指示。
ゆっくりネットの方に魚をコントロールし、ネットの真上に魚を持っていったとき、
今だ!!
と大声で叫びネットをあげさせる。
ところが
ガッビーン!! 最初のネットインは失敗!!
それでもオヤジは慌てず騒がず、魚をうまくコントロールし、再度、カンチャンの構えるネットの上に。
ネットインさせようと試みたはいいものの、魚がでかすぎて上手くネットにおさまらないので、ボートから身を乗り出してネットの突端に手をかけ、2人掛りでネットを持ち上げ、魚をデッキに釣り上げる。
ランディング、成功!!
思わず、息子のような年齢のカンチャンと肩を抱き合いながら雄たけびを上げてました。
このときは、正直言って、涙目になってます。
1999年3月の痛恨のバラシから10年近く、追い続けてきたメーターオーバーのバラマンディーは、127センチという、とてつもないサイズで幕を閉じることになりました。
オヤジ、お前はよくやったよ!!
ちなみに、釣れたルアーは、オーストラリアメイドのバラクラッシック(+15)の最新バージョンでした。 カラーはゴールドタイガー。もちろんフックはOWNERに変えてます。
リリースして10分後の撮影ですが、かなり疲労困憊です。
上手くネットインしてくれたカンチャンも、その後、しばらくの間、興奮のあまり手足が震えてましたが、「(逃がしたらどうしようと思って)ネットインするのが怖かった。」と言ってました。
ありがとう、カンチャン。(カンチャンには、ケアンズに戻ってから焼肉をご馳走しておきました。)
この日以降、2日間は、正直なところ、あまり釣りに身が入りませんでした。
あまりデカイ魚を釣り上げるのも考えモンですわ。